夕暮れ時です。都立家政の駅から鷺ノ宮方面へ線路沿いを歩いてきました。ちょうど真ん中ぐらいでしょうか、線路沿いの道から少しはいったところで赤い暖簾が目に入ってきました。今日のお目当て矢車さんです。


格子戸をくぐると別の時間が流れはじめるように感じます。昔ながらの店構えも素敵な和食のお店なんですけど、お酒ではなくて定食の晩御飯をお願いしてもいいのかな?
でも、心配はいりませんでした。全然大丈夫、やさしそうな店員さんが迎えてくれます。それでも今日は暑かったので、まずはビールをお願いしちゃいました。席についてまずは一杯、瓶からグラスに注がれたビールの泡を眺めているだけで、不思議と心がほどけていくような感じがします。ゴクリとまずは一杯、今日も一日お疲れ様でした。
さてメニューを拝見します。

少しいつもの定食にしてはお高めだけど、それよりも今日は期待感の方が高いのです。
ちゃんとした和食屋さんで定食をいただく・・・実はありそうでなかなかそういう機会がなかったりします。うまく言えないんだけど、ちょっと格の違いを感じるんですよね。お皿や小鉢にだってちゃんと気を配ってあって、味付けもやさしくて、どこか「家で食べるごはん」と「外で食べるごちそう」のちょうど真ん中にある、そんな感じ。たとえば、白ごはんが艶やかで、「ああ、これが主役だな」って思わせてくれる。味噌汁がほっとする出汁の香りで、胃よりも心をあたためてくれる。小鉢は季節を意識したり、野菜の取り合わせにセンスを感じさせてくれる。つまり、和食屋の定食って、「食べる」以上に「整える」ことを大事にしてる気がします。日常をちょっとだけ美しくしてくれる、そんな役割を持ったご飯なんですよね。

どうですか、この整い方!!
豚肉と夏野菜の炒め定食をお願いしたんですが、豚肉はやわらかく、野菜はしゃきしゃきと歯ごたえを残しています。赤や黄色のパプリカが映えて、口に運ぶたびに彩りの元気をもらえる気がします。
南蛮漬けの酸味とトマトの小鉢、胡瓜の漬物の塩気。それぞれが互いを引き立て合い、ひとつの「日常のごちそう」を作り上げているでしょ。定食とは不思議なもので、料理そのもの以上に「整えられた形」に安心する、まるで「今日もちゃんと生きてるな」と背中を押してくれるようなんです。見事すぎます、素晴らしいです!やっぱりこういうお店って期待を裏切らないですよね。
「家で食べるごはん」と「外で食べるごちそう」のちょうど真ん中の居心地の良さ、その絶妙な場所でひとときを過ごせたことが、何よりのごちそうでした。
夏の疲れを癒すように身体が少し軽くなり、店を出れば夜風が心地よく感じます。矢車の暖簾は静かに揺れて、またこの道を歩いておいでと語りかけてくれていました。
おまけ:今日は豚肉と夏野菜の炒め定食をいただきましたが、ネットを見るとお魚や煮物なんかも美味しそう。メニューも日替わりで旬のものをいろいろと出してくれるようですし、ちょっと自分へのささやかなご褒美で食べに来るのによさそうです。またお邪魔させてくださいね。