「本当に大切なものは、目には見えないんだよ。」
――サン=テグジュペリ『星の王子さま』
なんかちょっと変わった雰囲気で今回は書き出してみました。お伺いしたのは野方駅から少し歩いたところにある大衆食堂、名前もそのまま『野方食堂』さん。ずっと昔っからやっている結構有名な食堂さんです。昭和11年創業ということですから本当に年季の入った食堂ですよね。

外観はこんな感じです。目立つ看板があるわけでもないし、流行りのスパイスやSNS映えする盛りつけというわけでもありません。でも、長年通ってる人がいて、ずっと暖簾をくぐってくる人がいる。だからこそ、ずっと愛され続いている食堂さんなんですよね。
今日お願いした定食は、唐揚げと生姜焼きのA定食です。あらかじめスマホで調べて一番のおすすめを食べることにしました。やっぱり長年やっているお店にはその店の一番メジャーなメニューをまずはいただいてみたいじゃないですか、これってお店に対しての礼儀ですよね・・・とか勝手に自分の中で理屈つけて(相変わらず意味不明なことを言ってるなぁ‥我ながら)ビールと一緒にお願いしました。

こういう時のビールって瓶ビールがいいんですよね。生ビールももちろん大好きなんですけど、昔ながらの食堂でビール飲んでいるのって、瓶ビールなんですよ。「幸せの黄色いハンカチ」(1977年・山田洋次監督)っていう映画で物語の冒頭で高倉健が演じる勇作が刑務所を出て、最初にすることのひとつが小さな食堂に入って、ビールとラーメンを頼む場面、まさにこのイメージなんですよね(・・・ってさらに訳の分からないことを言っていますね・・・)
さて、唐揚げと生姜焼きのA定食です。しばらくして運ばれてきた定食は、実に王道です。白いお皿の真ん中にキャベツの千切り、それを挟み込むように左に生姜焼き、右にから揚げ。ごはんにお味噌汁に小鉢、そしてお漬物。これがお盆に乗って出てくるわけですよ、ね、実に王道でしょ。

すでに、気分は変なモードに入っちゃっていて、「俺って不器用ですから・・」とかつぶやきそうになっているんですが、そこは横においといてまずは唐揚げからいただきます。ザクッとした衣を割って噛めば、中から熱々の肉汁がじゅわっと広がってきました。味付けも濃すぎず、ビールとも白いご飯ともどちらでもOK!優しく受け止めてくれます。これだけですでにいい感じなんですが、ここは小鉢の切り干し大根をちょっぴり挟んで口を整えてから生姜焼きに行きます。見た目はなんてことのない普通のお肉なんですが、一口噛んでなるほど柔らかい。歯ごたえがないわけじゃないんです、でもやわらかい。ここはやっぱりご飯ですね。生姜焼きの味がお米を引き立てる感じ。そうそう、これなんですよ。食堂ってやっぱりご飯をおいしく食べさせてくれる場所って感じなんですよね。目に見えないんだけど、きっといろいろな工夫がおかずやらご飯やらお味噌汁やら小鉢やらにされているんでしょうね。それぞれがお互いを優しく引き立てあって、一つの定食として完成しているんですよ。もしかすると特別なことはしていない、でも、地味で地道な“手間”を惜しまない。それこそが食堂を支えてくれている土台であり長く私たちを惹きつけてくれるものなんだよって語りかけられてきているような気になったりして。まさに「本当に大切なものは、目には見えないんだよ。」って言われているような感じです。
「本当に大切なものは、目には見えないんだよ。」でも「派手じゃなくていい。まっすぐで、ちゃんとあればそれでいい。」唐揚げと生姜焼きの定食が、今日の夜にそっと教えてくれたような気がしました。 ちょっと背筋がのびたような気がして、でもそれ以上に幸せな気分にさせてくれるご飯でした。どうもありがとうございました。ごちそうさまでした。
おまけ:野方食堂さんはとっても有名な食堂さんです。私のブログ以外にもたくさん記事がでていますので是非そちらもご覧ください。ちなみに日本で現存する最古の飲食店として広く知られているのは、京都府京都市にある「本家 尾張屋 本店」さんらしいです。創業は1465年(寛正6年)で、約550年以上の歴史を誇るお蕎麦屋さんらしいですよ。機会があったら一度行ってみたいですよね。