高田馬場の駅を出ると、どこか「腹ペコの街」という空気が漂っている。
学生たちが行き交うこの街には、気取らず、うまくて、しっかりお腹を満たしてくれる店がいくつもある。
その中でも、いい意味で“気負わない佇まい”を見せていたのが、「とんかつ いちよし」 だ。
暖簾をくぐると、ほどよく落ち着いた和風の店内。
派手ではないのに、どこか端正で清潔。
“普通の食堂”という空気をまといながら、もう少し上質な何かを感じさせる――そんな雰囲気がある。
ご飯を「普通」で頼むと、しっかり大盛りが出てくるのは、さすが学生街。
この街で日々お腹をすかせる人たちに寄り添ってきた積み重ねなんだろう。
今日いただいたのはヒレカツ定食。ちょっと贅沢したけどそれでもリーズナブル。
なにより小さなお皿にこぼれんばかりのキャベツ、その横に並ぶヒレカツのきれいな断面。
ひと口かじれば、衣は軽やかにサクッとほどけ、中の肉はしっとり柔らかい。
ヒレらしいすっきりした旨味が広がって、箸が自然と進む。
学生向けのボリュームでありながら、味は“ちゃんとしたとんかつ”そのもの。
このバランス感覚こそ、いちよしさんの魅力だ。

食べ終えて外に出ると、夕方の馬場の雑踏が広がっていた。
街の灯りが、さっきより少しだけ優しく見える。
満腹の幸福感と、しっかりした料理を食べたあとの静かな充足――
その両方を、この一軒はそっと置いていってくれる。
学生の街で出会った、満腹と本気が同居するとんかつ。
また馬場を歩く日に、ふらりと寄りたくなる一軒だった。
おまけ・・・
とんかつが“日本式の料理”として広まったのは大正時代だそうです。
100年の歴史の中で、学生たちの“勝ち飯”として定着してきた、高田馬場でとんかつが似合うのも、そんな背景があるのかもしれないですね。そして素朴に疑問なのが『どうしてとんかつ屋の味噌汁は「しじみ」が多いのか?』ですよね。ちゃんと理由があって、ひと言でいうと 「しじみは脂の料理と相性がいいから」 なんです。
シジミに含まれる オルニチン は、肝臓の働きを助けることで知られていて、
揚げ物のような脂の多い料理を食べたあとに飲むと、体が少し軽く感じる。
昔から「しじみ汁は二日酔いに効く」なんて言われますが、
要は 胃と肝臓をそっと支えてくれるスープ なんですね。
それに、しじみは出汁がきれいで、味噌の風味を邪魔しない。
とんかつの主役っぷりを引き立てつつ、後口を優しくまとめてくれる
“名脇役”でもあります。
揚げ物の定食にしじみの味噌汁。
昔の料理人たちが自然と辿り着いた、理にかなった組み合わせなんでしょうね。
