夜の西武柳沢は、どこか時間の流れがゆっくりだ。
駅前の灯りも派手すぎず、歩く人の足取りもどこか穏やか。
そんな裏路地に、いつ行っても変わらない明かりを灯している店がある。
明喜屋。
看板も、外観も、驚くほど“いつも通り”で、そこがいい。

暖簾をくぐると、テレビではスポーツ中継。
カウンターの向こうでは、おじいちゃんとおばあちゃんが黙々と手を動かしている。
町中華のはずなのに、どこか定食屋の空気が強い。
それもそのはず、ここは「料理を食べに来る」というより、
「ちゃんとした晩ごはんを食べに来る」店なのだと思う。
頼んだのは、豚肉とキャベツの唐辛子みそ炒め定食。
甘辛さの中にちょっぴり辛味が効いていて、白いごはんが止まらない。
派手な盛り付けはないけれど、味はまっすぐで、迷いがない。
そこに単品で頼んだ納豆が加わると、この定食は一気に「日常の完成形」になる。
派手な盛り付けはないけれど、味はまっすぐで、迷いがない。
キャベツはしっかり火が入っていて、豚肉は噛むほどに旨味が出てくる。
納豆の素朴な粘りと豆の甘さが、その合間にちょうどいい間をつくってくれる。
「手料理」という言葉が、これほどしっくりくる定食もそう多くない。

町中華なのに定食屋のようで、
定食屋なのに家庭の食卓の延長線にある。
お腹を満たすだけじゃなく、体の芯までちゃんと整えてくれる。
食べ終えて、テレビのスポーツに一瞬目をやり、店を出る。
外の夜気が少しだけ心地いい。
続けること。
変わらないこと。
それは時に、新しいことをするよりもずっと難しい。
明喜屋は、今日も昨日と同じようにそこにあって、
それだけで、この街にとっては十分な意味を持っている。
今日もご馳走さまでした!
<おまけ>
豚肉とキャベツの味噌炒めと聞くと、四川料理の「回鍋肉(ホイコーロー)」を思い出します。
もともとの回鍋肉は、下茹でした豚肉を一度冷まし、もう一度鍋に“戻して”炒める料理。
日本の町中華では甜麺醤の代わりに味噌や辛味噌を使い、よりごはんに合う味へと進化してきました。
明喜屋さんの一皿も、そんな日本流回鍋肉の系譜にある味で、だからこそ不思議と落ち着くのかもしれないですね。
